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高画素カメラの解像度比較
久しぶりに新しいカメラの解像度をチェックしてみた。 一昨年、2016年の12月に月刊AVレポートを休刊にして以来初めてのチェックだ。今回チェックした機種はニコンD850(4575万画素)、キヤノンEOS 6D Mark Ⅱ(2620万画素)、同EOS M6(2420万画素)、同EOS M100(2420万画素)の4機種。チェックに使った解像度チャートはApplied Image Inc製のモノクロ解像度チェック用チャート、QA-77と電塾・運営委員の阿部充夫さん(長岡造形大学教授)が1999年に開発したカラー解像度チャートの2種類。以下に紹介するのは解像度チェックの結果だが、今回チェックした4機種の他に、中判のFUJIFILM GFX 50SやPENTAX 645Z、あるいは有力メーカーのハイエンドカメラなど、過去にチェックした14機種も加えて、計18機種のチェック結果を紹介した。18機種のうちソニーのα7R Mark ⅡとパナソニックのGX8、ライカのSLはちょっと古い機種だが、3社とも解像度にはあまりこだわらないメーカーなので、かりに最新機種をチェックしたとしても、あまり大きな進化は見られないはずだ。今回のチェックに使った画像データのフォーマットはfnacの研究所にならって、すべてJPEG。撮影したISO感度は100、1600、3200の3種類だがチェックに使ったのはISO100のみ。カメラの解像度はレンズの絞り値によって大きく変化するが、F5.6が最適絞りになるカメラが比較的多かったので、数機種の例外を除いて、原則、F5.6で撮影した画像でチェックした。なお、モノクロ解像度チャートのQA-77は私が購入した当時で8万円くらいしたが、電塾チャートは電塾のホームページ(http://denjuku.org/old/index.htm)から無料でダウンロードできるので、カメラの販売店は、是非、義務として、カラー解像度くらいは、ご自身でチェックして、お客さんにその結果を教えてあげるべきだろ。なぜなら、どんどん高額化している最近のカメラは買った後で後悔しても、そう簡単に買い替えるわけにいかないからだ。もちろん、解像度など気にする必要はないとおっしゃる向きもあるだろう。1年ほど前に偶然会った某カメラマンは「3次元の被写体を撮るのに、なぜ2次元のチャートを気にする必要があるんだ」と、おかしなことをいうので、こいつはアホかと思ったが、彼はれっきとした日本写真協会の会員なので、この団体もいずれ信用を失うことになるだろう。が、実をいうと、私自身もプロカメラマンではないので、それほど解像度にはこだわっていない。私が最も重視しているのは解像度よりも電池の寿命とコストパフォーマンスとコンパクトさだ。というわけで、最近は電池1個で820枚撮れるニコンD5500にタムロンの16-300mmとNIKKORの10-20mmをつけて使っているが、レンズ交換が面倒なので、D3400も買い足そうと思っている。このカメラは電池1本で何と1200枚も撮れるからだ。ちなみに、D5500もD3400も2416万画素しかないが、3000万画素を超えるカメラは手持ち撮影が難しいので、私の選択肢には多分、永久に入ってこないだろう。もちろん、D5500の解像度は以下に紹介する高画素カメラに比べると、あまり高くないが、我慢できないほど低くはない。以下、解像度チェックの結果は画素数の高い順番に紹介するが、その前に、まず、チャートの紹介から。
モノクロ解像度チャート QA-77
<写真上>はQA-77の全体写真、<写真下>は全体写真のほぼ中央部にある縦長と横長のくさび状ストライプゾーンの拡大写真。今回のチェックに使ったのは12、16、20、24、28、32、36、40の数字が入っている右側の縦長ストライプ。40の位置のストライプがはっきり写れば4000本/200mm、つまり20本/mmの解像度があることになる。最近はこの40を軽くクリアするカメラが何機種も登場しているが、逆に高画素カメラのなかにも、解像度があまり高くないカメラもあるので、そんなカメラはどんな事情があろうとも、決してお客さんに奨めてはならない。販売店の責任は重大だ。
電塾カラー解像度チャート
<写真上>は電塾チャートの全体写真、<写真下>はその最上部中央の赤枠で囲った部分の拡大写真。今回の解像度チェックに使った部分だが、この拡大写真の通りに写るカメラは滅多にない。言うまでもなく、同心円やストライプがちゃんと写るカメラは色再現性が良く、逆に同心円が十字形になったり、ストライプが格子状になったり、消えてしまったりするカメラは色再現の悪いカメラだ。ご存知の通り、現在店頭に並んでいるカメラの殆どは、いわゆるBAYER配列の3色分解フィルターを乗せたイメージセンサーを使っているので、残念ながら、ほぼ100%、ストライプや同心円が綺麗に写ることはない。画素数が5000万画素超の富士フイルムのGFX 50SやPENTAX 645Z、EOS 5DSRもその例外ではなく、同心円もストライプもちゃんと写らない。ご存知の通り、BAYER配列の3色分解フィルターはRGBの3原色で構成されるが、RGB各1個、計3個のフィルターで構成されるわけではなく、R1個、G2個、B1個、つまRGGB、計4個のフイルターで構成されるので、画像入力はRGGBという形になるわけだが、RGGBの形のまま出力すると、当然、不自然な色の写真になってしまうので、出力するときはRGGBをRGBに変換する処理が必要だ。しかし、この処理が難しい。カメラの画素数が1000万画素くらいだった数年前まではこの変換処理が得意なメーカーが2社ほどあったが、画素数が2000万画素を超えるようになってからは、得意なメーカーが1社も無くなってしまった。画像処理プロセッサーの能力が高画素化のスピードに追いつけなくなってしまったからだろう。今回チェックした18機種のうち、シグマのsd Quattro Hと富士フイルムのX-T2だけは例外的に同心円やストライプが綺麗に写っているが、言うまでもなく、両機種ともBAYERタイプのイメージセンサーを使っていないからだ。
PENTAX 645 Z
5140万画素、563,685円(価格ドットコム)、2014年6月27日発売
レンズ:smc PENTAX-D FA645 55mm F2.8 AL[IF] SDM AW、絞り:F10
キャッチフレーズ:驚愕の解像度と豊かな階調。真の高画質とはこういうことだ。
FUJIFILM GFX 50S
5140万画素、697,800円(価格ドットコム)、2017年2月28日発売
レンズ:GF 63mm F2.8 R WR、絞り:F10
キャッチフレーズ:世界最高レベルの「写真画質」に到達した。
EOS 5DSR
5060万画素、381,580円(価格ドットコム)、2015年6月18日発売
レンズ:EF 24-70mm f/2.8L Ⅱ USM、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:圧倒的な高解像度を実現するデジタル一眼レフカメラ。
ニコンD850
4575万画素、359,640円(価格ドットコム)、2017年9月8日発売
レンズ:AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8 G ED、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:4575万画素の真価。その高画質はジャンルを超越する。
ソニーα7R Mark Ⅱ
4240万画素、259,261円(価格ドットコム)、2015年8月7日発売
レンズ:Vario Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:高解像度、高感度、高速レスポンスを実現した新開発35mmフルサイズセンサー。
シグマ sd Quattro H
3860万画素、109,850円(価格ドットコム)、2016年12月20日発売
レンズ:35mm F1.4 DG HSM、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:唯一無二の画質。
3640万画素、204,454円(価格ドットコム)、2016年4月28日発売
レンズ:D FA MACRO 50mm F2.8、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:大フォーマットだから生み出せる、卓越した描写。
EOS 5D Mark Ⅳ
3040万画素、288,778円(価格ドットコム)、2016年9月8日発売
レンズ:EF 24-70mm f/4L IS USM、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:空気感、臨場感まで描写する、約3040万画素フルサイズCMOSセンサー。
EOS 6D Mark Ⅱ
2620万画素、173,324円(価格ドットコム)、2017年8月4日発売
レンズ:EF 24-70mm f/4L IS USM、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:フルサイズセンサー搭載による高画質、高感度と世界最軽量を実現した一眼レフカメラ。
FUJIFILM X-T2
2430万画素、129,399円(価格ドットコム)、2016年9月8日発売
レンズ:XF 35mm F1.4 R、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:FUJIFILM X-T2が可能にする、無限の撮影領域。
EOS M6
2420万画素、72,800円(価格ドットコム)、2017年4月20日発売
レンズ:EF-M 15-45mm f/3.5-6.3 IS USM、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:高精度AFと高画質を両立。
EOS M100
2420万画素、44,213円(価格ドットコム)、2017年10月5日発売
レンズ:EF-M 15-45mm f/3.5-6.3 IS USM、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:美しさが格段に違う、約2420万画素の大型センサー。
ニコンD5600
2416万画素、72,650円(価格ドットコム)、2016年11月25日発売
レンズ:AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:圧倒的な高画質で、撮るものすべてが美しく感動的に。
ライカ SL
2400万画素、820,800円(価格ドットコム)、2015年5月下旬発売
レンズ:VARIO-ELMART 1:2.8-4.0/24-90mm ASPH. OIS、絞り:F5.6
キャチフレーズ:35mmフルサイズフォーマットの画質を堪能できます。
ニコン D5
2082万画素、557,908円(価格ドットコム)、2016年3月26日発売
レンズ:AF-S NIKKOR 35mm f/1.4 G、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:プロフェッショナルの撮影領域を拡大する次世代フラッグシップモデル。
オリンパス E-M1 Mark Ⅱ
2037万画素、180,779円(価格ドットコム)、2016年12月22日発売
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:高画質とハイレスポンスとを両立させた「OLYMPUS OM-D」シリーズのフラッグシップ機。
LUMIX GX8
2030万画素、69,800円(価格ドットコム)、2015年8月20日発売
レンズ:LUMIX G VARIO PZ 14-42 F3.5-5.6、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:高画質20M Live MOSセンサー搭載によるるルミックス史上最高画質。
EOS 1DX Mark Ⅱ
2020万画素、549,800円(価格ドットコム)、2016年4月28日発売
レンズ:EF 24-70mm f/2.8L Ⅱ USM、絞り:F5.6
キャッチフレーズ:高画質と最高約14コマ/秒の高速連写を両立。
以上が解像度チェックの結果紹介だが、注目点は各機種のキャッチフレーズ。どこにも世界一とか世界初といった元気の良い大言壮語が見当たらない。平凡で、遠慮がちなフレーズばかりなので、カメラ業界の前途が心配。カメラの開発に携わっている人たちが、夢や開拓者精神を失ってしまったように感じられるからだ。唯一、パナソニックのGX8のキャッチフレーズが笑わせてくれるが、多分、あとで後悔したに違いない。せっかく「ルミックス史上最高画質」と元気の良いところを見せてくれたのに、画質があまりにもお粗末だということがばれてしまったからだ。(有限会社エイブイレポート社代表取締役 吉岡伸敏 2018年1月25日記)