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avreport’s diary

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カメラグランプリ2018大賞の

解像度をチェックしてみたが、

今年もやっぱりガッカリだった!

 そう、「ガッカリ」とは、言うまでもなく、ソニーα9の解像度があまりにも低くてガッカリしたということだ。そして、「今年もやっぱり」とは、解像度の高いカメラが大賞に選ばれたことが過去何年にも渡って、一度たりともなかったということだ。

 例えば、2017年大賞の「オリンパスE-M1 Mark2」も、2016年大賞の「ソニーα7R Mark2」も、2015年大賞の「キヤノンEOS 7D Mark2」も、そして2014年大賞の「ニコンDf」も解像度が呆れるほどに悪いのに、なぜか大賞に選ばれている。

 ちなみに、カメラグランプリ大賞の定義だが、カメラ記者クラブのホームページにはこう書かれている。  

『カメラグランプリ「大賞」は、期間内(編集部注:2018年の場合は2017年4月1日〜2018年3月31日)に新発売されたスチルカメラの中から、最も優れたカメラ1機種を選び表彰するものです。』  

 要するに、カメラグランプリ大賞は「最も優れたカメラ」に贈られる賞だということが分かったわけだが、しかし、不思議なのは「最も優れたカメラ」とは何かという、一番大事な定義をカメラ記者クラブが何も書いていないことだ。要するに、どんな条件を満たしていれば「最も優れたカメラ」と言えるのかということを何も書いていないわけだ。

 だから、解像度が低いから大賞の資格がないとか、AFが遅いから大賞の資格がないとか、動画が撮れないから大賞の資格がないとか、重くて大きいから大賞の資格がないとか、電池寿命が短いから大賞の資格がないとか、明暗のコントラストの強い被写体は撮れないから大賞の資格がないとか、等々、誰もそんな異論を差し挟むことができないわけだが、ただ、もうそろそろ、解像度の低いカメラを大賞に選ぶことだけは、やめにしてもらえないだろうか。

 解像度はどのような要素よりもカメラの良し悪しを決める重要な要素だと思うからだ。もちろん、最近は解像度の低いカメラの欠点をごまかすために、アナログ、デジタル、様々な加工技術を駆使してブスを美女に化けさせてしまう、手品師のようなカメラマンや、筆を選ばない弘法大師のようなカメラマンが世界中に横行跋扈しているようなので、「優れたカメラ」を真面目に選びだす意義はもうすでに失われているのかもしれない。そのうえ、被写体が山岳、秘境、深海、空中、天体、宇宙、野生動物、ペット、野鳥、植物、スポーツ、舞踊、演劇、音楽会、講演会、ポートレート、美術工芸品、等々、多種に渡るようになったので、その被写体にとっての最適なカメラも、当然、同じではないことが多いはずだから、定義の曖昧な「大賞」をあえて選びだす意義はもうないと言い切ったほうがいいのかもしれない。

 ただ、カメラグランプリはもう35年も続いているイベントなので、カメラ記者クラブとしては、どうしても、このイベントは続けたいはずだ。もちろん、そのためには「最も優れたカメラ」とは何かの条件を明確にしなければいけないわけだが、優れたカメラの条件を明確に定める作業自体はいたって簡単なことなので、カメラ記者クラブにその意思がありさえすれば、すぐにでも優れたカメラの条件を明確にすることができるはずだし、また、2019年には説得力のある新しいカメラグランプリ大賞を選ぶことができるようになるはずだ。

 ただ、優れたカメラの条件を満たしているかどうかをチェックするテスト撮影は公開の場で実施する必要がある。だから、選考方法も当然変えないといけない。2018年は53人の選考委員が根拠曖昧な投票によって大賞を決めてしまったが、優れたカメラの条件を明確にして、説得力のある公平なテスト撮影によって大賞を決めることになれば、53人もの選考委員は要らなくなるはずだ。

 数年前だが、カメラグランプリ表彰式で選考委員の何人かに「テスト撮影は大変ですね。一体、何台くらいテストなさるんですか」と尋ねたことがある。当然「100台」とか「200台」とか、そういう返事が返ってくるとばかり思っていたが、そんな感心するような返事は全くなく、「テスト撮影なんか1台もしないよ」「テストなんかしている選考委員なんて一人もいないよ」という返事ばかりが返ってきたので、この業界の先は長くないなと心配になったくらいだ。要するに、現行のカメラグランプリ大賞は「最も優れたカメラ」ではなく、精々「最も良さそうに見えるカメラ」、あるいは「最も応援したいカメラ」「最も気に入ったカメラ」「最も欲しいカメラ」くらいの呼び方に変えたほうがいいということになるわけだ。

 もし、カメラ記者クラブに本気で「最も優れたカメラ」を選ぶ意思があればの話だが、2019年からは、被写体別に大賞を決めるようにしてはどうだろう。

 余談だが、2015年6月、JPEA総会の基調講演で「カメラグランプリ受賞カメラは本当に良いカメラか」という講演をしたことがある。なぜ、こんなタイトルをつけたかというと、ご推察の通り、過去にカメラグランプリ大賞に選ばれたカメラの解像度が、どれもこれも、あまりにもお粗末だったからだ。

 多分、当時もいまも、解像度がお粗末だということに気づいている人はあまりいないのだろう。そして、本気で良いカメラを探している人も、また、本気で良いカメラを作りたいと思っているメーカーのエンジニアもいなくなってしまったのだろう。

 この講演があるフェイスブックに紹介されると、カメラグランプリ選考委員の一人である、チンピラのようなカメラマンがそのフェイスブックのコメント欄にこんなクレームをつけてきた。

「カメラグランプリは良いカメラを選出しているわけではありませんが」だって。まさに空いた口が塞がらないだ。

 選考委員であることの責任の重大さをまるで自覚していないわけだが、このような質の悪い人物を選考委員に選ぶカメラ記者クラブの質もまた問われねばならないだろう。  ちなみに、このチンピラが私の講演のタイトルにクレームをつけてくるやいなや、このフェイスブックの管理者は

「こうですね。http://www.cjpc.jp/gra/2015/grandprix15J.html」と返信し、筋の通らない言いがかりだとばかりに、ピシャリとたしなめてくれた。要するに「カメラ記者クラブのホームページに、ちゃんと、カメラグランプリ大賞は最も優れたカメラに贈られる賞だということが明記されていることを知らないのかい、君は!」と諭してくれたわけだ。

 念のため、このフェイスブックのコメント欄には「ある意味、過激なテーマですね」 「とても興味深いテーマですね!」といったコメントも寄せられたので、日本のカメラ業界が立ち直る可能性はゼロではないのかもしれないが、優秀な頭脳がカメラ業界に興味を失ってしまったことを、今や誰も否定できないだろう。

 さて、本題の解像度だが、以下の写真をご覧になれば、カメラグランプリ受賞カメラの解像度がごく少数の例外を除いて、いかにお粗末かということが分かるはずだ。

 最初に紹介した写真はカメラの解像度をチェックするために使った2枚のチャート写真だ。1枚めは、きめ細かな描写ができるかどうかをチェックするために使ったモノクロ解像度チャート「QA 77-P-RM」(APPLIED IMAGE INC製)、そして2枚めはRGBの正確な再現力がどの程度あるか、つまりカラー再現力と形状認識力をチェックするために使った電塾のカラー解像度チャートだ。この2つのチャートの見方は2018年1月25日に投稿した当ブログの第3弾「高画素カメラの解像度比較」にもう少し詳しく書いてあるので、参考にして頂きたい。  

 続く写真は、過去5年間のカメラグランプリ大賞カメラで撮影したチャート写真。2018年大賞のソニーα9、2017年大賞のオリンパスE-M1 Mark2、2016年大賞のソニーα7R Mark2、2015年大賞のキヤノンEOS 7D Mark2、そして2014年大賞のニコンDfの5機種で撮影したチャート写真だが、どれもこれも、解像度はお粗末だ。

 そして、次の写真は2016年7月7日に発売された2950万画素のAPS-Cミラーレス一眼「シグマsd Quattro」で撮ったチャート写真。非常に解像度の高い写真なので、5年分のお粗末な写真を見せられて不愉快になった人には、格好のお口直しになるはずだ。もちろん、sd Quattroは減点要素も幾つかあるカメラだが、もし、2017年のカメラグランプリ大賞を解像度だけで選んでいたとしたら、sd Quattroが大賞に選ばれていても決しておかしくなかったと言っていいだろう。

 しかし、現実の投票結果は惨憺たるものだった。ちなみに、2017年の大賞に選ばれたオリンパスE-M1 Mark2に票を入れた選考委員の数は49人のうち大多数の47人。そして、47人からの得票数は166票。これに対して、sd Quattroに票を入れた選考委員はたったの4人。そして、得票数もたったの8票。これは幾らなんでもおかしいだろう。やはり、カメラグランプリは選考方法をかえるべきだ。

 最後に見て頂くのは、もう一度、現実のお粗末さを再認識して頂きたいので、2018年カメラグランプリの投票で大賞の193票に次ぐ得票数を獲得したカメラの上位4機種で撮影したチャートの写真を紹介したい。

 上位4機種は得票数の多い順に、ニコンD850(168票・あなたが選ぶベストカメラ賞とカメラ記者クラブ賞をダブル受賞)、パナソニックLUMIX G9 PRO(54票・カメラ記者クラブ賞受賞)、富士フイルムX-H1(35票)、ソニーα7 Mark3(32票)の4機種。このなかには、D850のように、モノクロ解像度は非常に高いのに、カラー解像度がお粗末としか言いようのないカメラがあるので、とても残念だ。富士フイルムX-H1はモノクロ解像度、カラー解像度ともに、まあまあだが、sd Quattroほどのクオリティではないので、もう一工夫望まれるところだ。

 最後に、過去に投稿したブログの訂正をさせてください。2018年5月13日に投稿した「高画素カメラの解像度比較<第2弾>」の訂正です。冒頭で「2017年4月以降に発売された2000万画素以上のレンズ交換式カメラ全18機種のうち11機種の解像度をチェックしてみました」と書きましたが、全18機種ではなく全19機種の間違いでした。もう、お気づきかもしれませんが、ソニーα9を見落としていました。従って、19機種のメーカー別内訳も次のように変わります。キヤノン8機種、富士フイルム3機種、ソニー3機種、ニコン2機種、パナソニック2機種、リコー1機種です。

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APPLIED IMAGE INC製のモノクロ解像度チャート「QA-77-P-RM」

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電塾カラー解像度チャート 同心円や縦、横、斜めのストライプが綺麗に写れば合格

 

過去5年のカメラグランプリ大賞カメラで

撮ったチャート写真

★2018年大賞 ソニーα9

2017年5月26日発売 店頭価格:410、496円

35mmフルサイズミラーレス一眼 2420万画素

使用レンズ:ZEISS DISTAGON T* FE35mm F1.4 ZA

撮影感度;ISO 100 撮影絞り:F5

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★2017年大賞 オリンパスE-M1 Mark2

2016年12月22日発売 店頭価格:162,180円

マイクロフォーサーズミラーレス一眼 2037万画素

使用レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40 mm F2.8 PRO

撮影感度;ISO 64 撮影絞り:F5

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★2016年大賞 ソニーα7R Mark2

2015年8月7日発売 店頭価格:190,980円

35mmフルサイズミラーレス一眼 4240万画素

使用レンズ:VARIO-TESSAR T* FE24-70mm F4 ZA OSS

撮影感度;ISO 100 撮影絞り:F5

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★2015年大賞 キヤノンEOS 7D Mark2

2014年10月30日発売 店頭価格:114,480円

APS-C一眼レフ 2020万画素

使用レンズ:EF-S 10-22 mm F3.5-4.5 USM

撮影感度;ISO 100 撮影絞り:F5

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 ★2014年大賞 ニコンDf

2013年11月28日発売 店頭価格:216,378円

APS-C一眼レフ 1625万画素

使用レンズ:AF-S NIKKOR 24mm f/1.4 G ED

撮影感度;ISO 100 撮影絞り:F5

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解像度はすごく高いのに

カメラグランプリ2017の投票では

選考委員からほとんど無視された

シグマ sd Quattro

2016年7月7日発売 店頭価格:64,259円

 APS-Cミラーレス一眼 2950万画素

撮影感度;ISO100 撮影絞り:F5

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カメラグランプリ2018の選考投票で大賞に次で得票数が多かった上位4機種のチャート写真

★2018年の得票数2位 ニコンD850(168票)

2017年9月8日発売 店頭価格:330,119円

35mmフルサイズ一眼レフ 4575万画素

使用レンズ:AF-S MICRO NIKKOR 60mm F2.8 G ED 

撮影感度;ISO 100 撮影絞り:F5

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★2018年の得票数3位 

パナソニックLUMIX G9 PRO(54票)

2018年1月25日発売 店頭価格:141,786円

マイクロフォーサーズミラーレス一眼 2033画素

使用レンズ:VARIO-ELMARIT 12-60mm/F2.8-4.0 

撮影感度;ISO 200 撮影絞り:F5

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★2018年の得票数4位 

富士フイルムX-H1(35票)

2018年3月1日発売 店頭価格:196,600円

APS-Cミラーレス一眼 2430画素

使用レンズ:XF23mm F2 R WR 

撮影感度;ISO100 撮影絞り:F5

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★2018年の得票数5位 

ソニーα7 Mark3(32票)

2018年3月1日発売 店頭価格:211,538円

35mmフルサイズミラーレス一眼 2420万画素

使用レンズ:DISTAGON FE35mm F1.4 ZA

撮影感度;ISO 100 撮影絞り:F5

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【投稿日(posted date)】2018年7月11日(July 11th 2018)

【投稿者(poster)】エイブイレポート社・avreport's diary・編集長:吉岡伸敏・副編集長:吉岡眞里子(AV REPORT Co.,Ltd.・avreport's diary・Chief Editor:Nobutoshi Yoshioka・Assistant Editor-in-Chief : Mariko Yoshioka)