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avreport’s diary

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ニコンZ7で解像度チャートを撮ってみた

  前号(2018年8月25日投稿)ではニコンZシリーズの発表会(同8月23日)のあと開かれたタッチ&トライの会場で触らせてもらったZ7(試作機)で撮った写真が、私がいつも取材に使っているニコンD5500で撮った写真よりも遥かに綺麗だったことを報告した。

 多分、あまり参考にならなかったと思うが、説得力に欠けた理由は言うまでもなく、タッチ&トライの会場で撮った被写体が低画素カメラでもよく写る草花だったからだ。しかも、画質を比較したZ7とD5500のスペックがあまりにも違いすぎたからだ。念のため、Z7は35mmフルサイズ・4575万画素、D5500はAPS-Cサイズ・2416万画素だ。だから、Z7の方が綺麗に写るのは当り前なので、今号では、低画素カメラでは、絶対、綺麗に写らない2種類の解像度チャートを被写体にして、殆ど同じスペックのZ7とニコンD850で撮り比べてみた。この両機はセンサーサイズも画素数もまったく同じだ。

 両機の解像度チェックに使ったチャートは、当ブログではもうお馴染みの米国・アプライド・イメージ社のモノクロ解像度チャート「QA-77」と電塾のカラー解像度チャートだ。

 Z7の出来栄えについては、すでに、色んなユーチューバーたちが、我先にと、したり顔で、あるいは得意げな顔で、あれこれと解説を加えているが、なぜか残念なことに、このフルサイズミラーレス一眼は解像度が高いとか、色再現性が良いとか、形状認識性能が良いとか、そういった画質に対する解説がまったく見当たらない。多分、日本のユーチューバーたちはメカにしか興味がないか、カメラの画質に対する興味がまったくない人たちなのだろう。でなかったら、高画質を追求すべき時代がとっくの昔に終わっていたか、あるいは「撮って出し」で勝負するプロ写真家たちがもうすでに絶滅してしまったと考えるしかないだろう。

 今回、解像度チャートの撮影に使用したレンズはZ7用がNIKKOR Z 24-70 mm f/4 S、D850用がAF-S NIKKOR 24-70 mm f2.8G ED。撮影条件は両機とも同じで、撮影感度はISO100、画質モードはJPEG・FINE、撮影モードは絞り優先オート、手ぶれ補正機能はオフ。2秒のセルフタイマーも使った。

 参考データとして、フォトキナ2018の前日にLマウントアライアンスが発表されたことによって、突如、注目されることになったライカLマウントを搭載したイカ初のフルサイズミラーレス一眼、ライカSL(2420万画素・2015年11月28日発売)で撮った解像度チャートの写真も紹介した。Z7の普及機、Z6の画素数が2450万で、ライカSLの画素数(2420万画素)とよく似ているからだ。

 そして、ついでだが、Z7のタッチ&トライの会場で一緒に撮り比べたAPS- CサイズのD5500(2416万画素・2015年2月5日発売)で撮った解像度チャートの写真も紹介したので、フルサイズのライカSLとAPS-CサイズのD5500と、どちらの解像度が高いか、写真を拡大して、しっかり比較して頂きたい。D5500の解像度のほうが高いことがお分かりになるだろう。

 そこで心配になるのが、Lマウントアライアンス加盟3社の足並みの乱れだ。もし、3社のLマウントカメラに画質のバラツキが出るようだと、アライアンスの信頼低下、しいては崩壊に繋がる恐れもあるだろう。ちなみに、これまでに弊社でチェックしたライカのカメラのなかで、解像度が高いと感心したのは、ただの1機種だけ、ライカMモノクロームだけだったので、とても心配だ。

 また、Z7やD850とほぼ同じ画素数のフルサイズミラーレス一眼、ソニーのα7RⅢ(4240万画素・2017年11月25日発売)、画素数は少ないが解像度の高さに定評のあるFoveonセンサー搭載のAPS-Hサイズ・ミラーレス一眼、シグマsd Quattro H(3860万画素・2016年12月20日発売)、そしてFoveonセンサーとも違い、最も一般的なベイヤー配列センサーとも違う構造を持つX-Trans CMOSセンサーを搭載したAPS-Cサイズ・ミラーレス一眼、富士フイルムX-T3(2610万画素・2018年9月20日発売)で撮った解像度チャートの写真も紹介した。

 これだけ多くの画像比較データをご覧になれば、Z7の実力が大体お分かりになると思う。また、EOS RやパナソニックSシリーズのような発売前のフルサイズ・ミラーレス一眼の画質レベルも、多分、この程度だろうと、想像がつくはずだ。しかし、Z7程度の画質レベルでユーザーは満足するのだろうか。以下に紹介した写真の通り、カラー解像度に関する限り、相変わらず、APSサイズのミラーレス一眼のほうがZ7や既発売のソニーα7RⅢよりも遥かに優れているが、ニコンソニー恥ずかしいと思わないのだろうか。

 果たして、フルサイズミラーレス一眼は進化なのだろうか、退化なのだろうか。評価は人によって分かれるだろうが、退化だということが誰にでもわかるのは電池寿命が極端に短くなってしまったことだ。しかし、もっと理解に苦しむのは、フルサイズミラーレスメーカー各社がまるで判で押したようにこう言っていることだ。

 「レンズマウントの口径を大きくし、フランジバックを短くすることによって、レンズ設計の自由度が増した」 

 本当に自由度が増したのなら、もっと安いレンズが次々と出てくるはずだが、現実はまったく逆だ。あるメーカーの商品企画担当者は「マウント径をあんなに大きくしたら、レンズの値段は材料費だけで40万円になりますよ」と教えてくれた。話半分としても、真実に近い話だろう。つまり、マウント径を大きくしたために、レンズ設計の自由度が逆に失われてしまったったことになるわけだ。

 そして、フルサイズミラーレス一眼の致命的弱点はデジタル一眼レフとまったく同じ要素技術を恥ずかしげもなく、なんの躊躇いもなく、使い続けていることだ。要するに、フルサイズミラーレス一眼もデジタル一眼レフも、着ている洋服がちょっと違うだけで、中身は同じだということだ。

 だとしたら、言うまでもなく、フルサイズミラーレス一眼は、どう頑張っても、カメラ業界の衰退トレンドに歯止めをかけることはできないだろう。もし、本当に救世主の登場を願うのなら、要素技術を根本的に見直すべきだろう。例えば、ものすごく薄くて超高感度の有機センサーとか、ボタン電池1個で3000枚くらい楽に撮れるメカとか、要素技術のブレークスルーを急ぐべきだろう。

 以下は画像データ。最初の写真2枚は解像度チャートの写真。モノクロ解像度チャート(上)とカラー解像度チャート(下)だが、モノクロ解像度チャートが綺麗に写っても、カラー解像度チャートが綺麗に写らないデジタルカメラが殆どだ。

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米國アプライド・イメージ社のモノクロ解像度チャート「QA-77」

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電塾のカラー解像度チャート。殆どのカメラは縦横、斜めのストライプと同心円が綺麗に写らない。

Z7のモノクロ解像度

Z7 絞りF4(開放値)

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Z7 絞りF5.6

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Z7 絞りF8

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D850のモノクロ解像度

D850 絞りF4(開放から4番目のF値

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D850 絞りF5.6

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D850 絞りF8

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Z7のカラー解像度

Z7 絞りF4(開放値)

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Z7 絞りF5.6

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Z7 絞りF8

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D850のカラー解像度

D850 絞りF4(開放から4番目のF値

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D850 絞りF5.6

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D850 絞りF8

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イカSLのモノクロ解像度とカラー解像度

イカSL モノクロ解像度 絞りF8 レンズ:VARIO-ELMARIT-SL 1:2.8-4/24-90 ASPH

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イカSL カラー解像度 絞りF8 レンズ:VARIO-ELMARIT-SL 1:2.8-4/24-90 ASPH

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ニコンD5500のモノクロ解像度とカラー解像度

ニコンD5500 モノクロ解像度 絞りF8 レンズ:AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3。5-5.6G VR

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 ニコンD5500 カラー解像度 絞りF8 レンズ:AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3。5-5.6G VR

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シグマ sd Quattro Hのモノクロ解像度とカラー解像度

シグマsd Quattro H モノクロ解像度 絞りF8 レンズ:35mm F1.4 DG HSM

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シグマsd Quattro H カラー解像度 絞りF8 レンズ:35mm F1.4 DG HSM

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ソニーα7RⅢのモノクロ解像度とカラー解像度

ソニーα7RⅢ モノクロ解像度 絞りF8 レンズ:Distagon T*FE35mm F1.4 ZA

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ソニーα7RⅢ カラー解像度 絞りF8 レンズ:Distagon T*FE35mm F1.4 ZA

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富士フイルムX-T3のモノクロ解像度とカラー解像度

富士フイルムX-T3 モノクロ解像度 絞りF8 レンズ:XF23mm F1.4 R

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富士フイルムX-T3 カラー解像度 絞りF8 レンズ:XF23mm F1.4 R

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【投稿日(posted date)】2018年10月12日(October 12,2018)  

【投稿者(poster)】エイブイレポート社・avreport's diary・編集長:吉岡伸敏(nobchan@din.or.jp)・副編集長:吉岡眞里子(marico@din.or.jp)/ AV REPORT Co.,Ltd.・avreport's diary・Chief Editor:Nobutoshi Yoshioka(nobchan@din.or.jp)・Assistant Editor-in-Chief:Mariko Yoshioka(marico@din.or.jp)