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avreport’s diary

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 Lマウント・アライアンスのメンバーになったシグマはFoveonセンサー搭載のLマウントフルサイズミラーレス一眼を2019年中に発売すると公表したそうだが、果たして鵜呑みにしてもいいのだろうか。

 フォトキナ2018の3日目の午前10時過ぎ、シグマブースに同社の山木和人社長を訪ねたが、すでに取材の予約が一日中ぎっしりということで、山木社長はシグマで一番の人気者、畳家久志氏を代打に指名してくれた。畳家氏は同社商品企画部・商品企画課・課長。韓国のサムスンから転職してきた異色の人物だ。

 Lマウントアライアンスが発表されたのはフォトキナ2018開幕の前日、9月25日。その日の午前中に開かれたライカカメラの記者会見でのことだったが、プレゼンテーションステージの上にはパナソニックの本間哲朗専務とシグマの山木和人社長まで並んでいるので、一体何ごとなんだろう、さては、パナソニックが業績不振が伝えられるライカカメラとシグマの2社をまとめて吸収するのかなと、割合、違和感なく思ったが、まさか銅メダルを3枚張り合わせるアライアンスの発表があるとは思いもしなかった。

 というのは、ステージ上のライカカメラの社主、カウフマン氏が終始、苦虫を噛み潰したような顔をしていたのに対して、パナソニックの本間専務が満面にはじけんばかりの笑みを浮かべ、そしてもう一人の山木社長はというと、何だか、はにかんだような笑みという、微妙に違った表情だったものだから、決してライカカメラにとって、良い発表があるとは思えなかったわけだ。

 それに、ライカカメラのような名門企業と日本を代表するようなエレクトロニクスメーカーが他人のふんどしで相撲をとるようなことをするはずがないと、迂闊にも思い込んでいたからだ。

 しかし、この3社には常識が通用しない側面があるので、常識では恥ずかしいことでも、平気でやってしまうことが多いのだろう。なぜか、この3社からは最近、業界紙に対して記者会見の案内が届いたことがない。とても閉鎖的な3社だが、果たしてユーザーにはどんな顔で対応するのだろう。以下は畳家氏とのインタビュー。

            ★

 ★そもそも、このLマウントアライアンスの話はいつから始まったんですか。

 「別にLマウントに限らずに、我々がミラーレス用の交換マウントを使いたいよ、というのは、実は以前のsd Quattroを開発した時期から色々検討してたんですね。ただ、その当時は、結果的にはSAマウントを維持してミラーレス化をしたんですけど、やはり我々単独のマウントでSAマウントをさらに、例えばミラーレス専用のシグマ独自のマウントにしたということでも、なかなかお客さんって、ついてきてくれないのかなというのもあって、最初はSAマウントを維持したわけですね。ただ、やはり世に出してみると、お客様は、これやっぱ、ここ外れるよねとか、色々、お声を頂いて、やっぱり次の段階にはミラーレス専用マウントをやりたいよ、という思いが我々としてはありました。

 結果的に色々お話を伺うなかでは、パナさんも、当然、マイクロフォーサーズをずっと主導してこられて、ただ、それをやりながらも、いつかはフルサイズという話ももってらしたようで、我々とパナさんというのは、フォーサーズ系のアライアンスでも一緒にやらせてもらってますし、時々、そういう意見交換はさせてもらっているので、それで、ちょっと色々話をするなかで、何か一緒にやれないのかなというのは、ですから、もう3年前くらいの話なんですかね。ですから、別にそのときはLだっていうのはなくて、要は単独でフルサイズ専用のマウントってやるのは、なかなか、お客さんにメリットもないので、何とかして、巧い形はないかというのが、その時代でした」

 ★そのときは、ライカは絡んでいなかったんでしょ。  「そうですね。ただ、まあ、結果的には、あとから聞いた話なんですけど、パナさんはパナさんで、ライカさんとも当然やってらっしゃるので、そちらとは、ちょっとお話があったようですね。ただ、我々には、直接、ご照会がなかったので、どういう形が良いだろう程度の議論だったんですね。それがホントの意味で具体的なところというのは、2017年の頭にもう正式にLというものの細かな仕様とか、基本的なところを含めた話が出てきまして、これを我々3社でちゃんと、やるかどうかという検討段階に入りました。そのなかでは、単純に物理的な、メカニカルな部分というのは、もう、Lできっちり決められていて、別に何も悪い所がない、良くできたメカになっていますので、それはそのまま踏襲しましょうと。ただ、レンズの通信の部分については、それぞれ各社、やりたいことというのは若干、ズレがあったりするんですね。パナさんであれば、パナさんがもっていらっしゃる通信技術を活かしたい、我々は逆に、DSLR系でキヤノンさんのEFの通信の部分ですとか、ニコンさんのFの通信の部分ですとか、色々、ソニーのEマウントの部分も含めて、我々として、各社の色々な通信のやり方は分っていますので、一番効率の良いもの、というのをやりたいよと、で、当然、元のLではできてませんよと、その辺のディスカッションをして、当初のLよりは一つアップグレードした通信規格を盛り込めそうだというのが見えたので、最終的にやりましょうという決定をしました」

 ★マウントの口径とかバックフォーカスの長さは元のままで、通信の部分が変るわけですね。  

 「そうですね。通信の部分も互換性はちゃんと確保してますので、例えば、いまのSLのカメラに、今後出る我々のレンズですとか、パナソニックさんが出されるレンズとかをつけて頂いても、充分、機能すると。で、それを実現したうえで、新しいカメラではより新しい、柔軟な通信ができるような仕組みってのを入れてます」

 ★Lマウントアライアンスが発表された翌日の9月26日に御社の山木和人社長がWEB上にメッセージをお出しになりましたね。  

 「ハイ」  

 ★あのメッセージのなかに「Lマウントが最も理想的なマウントだ」と書いてありますが、ニコンキヤノンソニーのマウントに比べて、どこが理想的なんですか。  

 「当然、それぞれ各社さん、自分たちの採用するものが良いというふうに言われるのは間違いなくて、我々も我々の使い方で見たときに、Lというのがベストだいうふうな理解をしています。一つはレンズの固定ですね。Lはご存知のように、4本爪で締結する方式をとっています。恐らく、通常の撮影レンズであれば、3本爪であろうが、4本爪であろうが、そんなに違いはないと思うんですけど、我々は例えばシネマ用のレンズも持っていたり、シネマ用のEOSマウント、EFのマウントの経験とかもあるので、将来、まだちょっと具体的にはこれからで、何も決ってはいないんですけど、かりに将来、Lマウントを活用して動画のシネマカメラですとか、シネマ用レンズとかを考えていくときには、より4本爪のほうが堅牢性があるというのがまず一つですね。  

 あとは、ちょっと先ほど申し上げたんですけど、レンズ通信の柔軟性というところを、かなり今回重視してまして、それが我々の既存のDSLR系のレンズを、かりにコンバータを介してLマウントのカメラに付けた場合でも、なるべくロスなく通信ができるような仕組みが今回、入ることになりましたので、その辺りも含めて、既存のものよりはLマウントのほうが、我々のシステムとしては最適だというふうに考えています」

 ★マウント径を55mm(ニコンZ)とか54mm(キヤノンRF)といった巨大なものにすると、レンズの値段がどうしても高くなるという指摘がありますが、マウント径が51.6mmのLマウントなら、レンズの製造コストはニコンキヤノンより下がりますか。

 「正直、ほぼほぼ、変らないと思ってます。有効径という意味からすると、一般論ですけど、例えばソニーさんのEマウントというのは、マウントの内径を正面から見て、若干、センサーがケラレているんですよね。ていうと、やっぱり、まっすぐ周辺には光が届かないということなので、どうしても斜めからの光で周辺の画をつくるっていうと、やっぱり、どうしても周辺光量が落ちてしまうんですね。それはもう、マウントのメカニカルに制限されたことです。当然、キヤノンさん、ニコンさんの新しいマウントというのは完全に余裕がありますから、まったく問題ないと。じゃあ、その余裕というのは、どこまで本当にあったほうがいいの、という世界になるので、我々、別にそこまでなくても全然問題ないよと。51.6mmというLマウントの口径は、例えばライカさんのSLのカメラを見て頂ければ分るんですけど、ちゃんとフルサイズのセンサーの両肩ですね。ここから、さらにちょっと余裕をもってマウント径が構成されていますので、必要充分な有効径を確保できております。

 あと、我々のシステムは、恐らく、ま、当然、将来は分りませんけど、現時点ではフルサイズ、あとは可能性として、APS-C、そこまでを考えてますので、フルサイズ以上のセンサーをかりにやるかどうかっていうと、今の時点ではまったく考えてないです。ですから、フルサイズというフォーマットまでで考えた場合には必要充分な有効径を持ってます。  

 あと、フランジバックの話もあるんですけど、当然、短ければ短いほど、レンズ設計的には有利な面はあるんですけど、ちょっと懸念点としましては、例えば、センサーは光を取り込むためにマイクロレンズを表面に貼り付けているんですけど、そこに乱反射がきたものが返ってきて、例えばIRのガラスとかに逆に反射をして写り込むような現象っていうのが、どうしてもあるんです。その分というのは、やはり、フランジバックが若干長い方がそれを打ち消しやすい。  

    もう一つは、まだ全然、規格もないんですけど、先ほどちょっと言いましたね。Lマウントをかりに、今後、シネマカメラとかシネマレンズの方にまで拡大しましょうよというときには、実は20mmのバックフォーカスがあると、そこに可変のNDフィルターとかを入れられるんですね。正直いって、16mmにしてしまうと、そこはもう何も入れられないから、その辺も視野に入れて、我々としては将来性を考えたときに、無理に15mmとか16mmとかの限界値ではなくて、20mmくらいの方が一番扱いやすいんじゃないかなというふうには考えています」

 ★Lマウントアライアンス加盟3社の役割分担はあるのですか。

 「正直、役割分担っていうのはありません。ただ、言えるのは、元々、ライカさんが持っていらっしゃったLマウントのシステムですので、そういう意味ではライセンサーという意味でのライカさん、そのライセンスの供与を受けるパナソニックさんと我々がライセンシーという立場はあります」

 ★ライセンスは有料ですか。

 「いえいえ。特にお金の話ではないですね、まったく」

 ★Lマウントアライアンスにもっと多くのメーカーが参加してくる可能性はありますか。  

 「特に否定はしていません。ただ、まあ、どういうんでしょうね。全部オープンですよ、自由に使って下さいねという立場ではないので、やはり、ちゃんと我々と話をさせて頂いて、どういうんでしょうね・・・」

 ★アライアンスに入るには契約をしないといけないわけですね。

 「ハイ。ですから、リクエストがあれば、すぐに検討させて頂きます」

 ★黙って、無断でLマウントを使っちゃ駄目ですよということですね。  

 「そうです。オープンにしちゃうと、まったくコントロールが効かなくなるんですよね。メカだけならともかく、通信まで入っちゃうと、それでコンパチビリティがなくなると、お客様の問題になっちゃうので、なるべく、そういうのは避けたいなと思っています。ですから、正式に言って頂ければ、ちゃんと我々で検討します」

 ★単純に素人が考えると、カメラはライカパナソニックが作って、レンズはシグマが供給すると考えてしまいますが、そうじゃないんですね。  

 「そうではありません。そうではないので、敢えて山木(シグマ社長)からのメッセージというのを出させてもらったんですね。何も言わないと、シグマだから、ま、レンズを出すのねとか、マウントコンバータを出すのね、くらいな話になるんですけど、そうではなく、あくまで我々3社対等にアライアンスとして発表させてもらいましたので、我々も当然、ボディもやります、勿論、マウントコンバータもやります。レンズもやります。各社、ボディ、レンズ、それぞれやるので、その意味でまったくイーブンですね」

 ★今回のアライアンスが3社連合でなく、かりに、ライカパナソニックの2社連合だった場合、必要なレンズをしっかり揃えることができると思いますか。

 「例えば、我々がいなくて、ライカさん、パナソニックさんで進んだ場合に、レンズのラインナップがちゃんと揃うんでしょうか、ということですかね。ま、頑張ってラインナップは揃えられると思うんですけど、正直言うと、お客様から見た場合に、やはりバリエーションの少ないものというのは、魅力のないシステムになってしまうので、逆に私がお客さんの立場であれば、敢えて買おうと思うシステムじゃないのかなという気がしますね。やはり、そういう意味では、バラエティを持っている我々が入ることで、当然、頑張ってLマウント化もしていきますので、初めてお客様がキヤノンニコンだけじゃない、別の選択肢としてLマウントを選んでもらえるきっかけになるかなと思っています」     

 ★SAレンズのLマウント化も考えていらっしゃるんですね。

 「勿論、それを目指して開発しています。それから、キヤノンさんのボディを使われているお客様がシグマのArtレンズをいま使ってますよと。非常に写りも良くて、あらゆる用途に使えて非常に便利なんだけど、かりにシグマが来年、FoveonセンサーのEマウント(多分、Lマウントの間違い)カメラを出したときに、ちょっと面白いカメラだよねと。そこにアダプターさえ入れれば、お客様がいま持っていらっしゃるキヤノンマウントのArtレンズをそのまま使えますので、これは凄く便利でしょうと。そこを目指したいなと思ってますね」  

 ★御社の山木社長は「SAマウントカメラ・レンズをご愛用の皆さまへ」(2018年9月26日付)というメッセージのなかで、[SIGMAはLマウントをシステムの軸としたフルサイズミラーレスカメラ開発を始動します」とおっしゃっていますが、Foveonセンサーを搭載したフルサイズのLマウントカメラボディを開発するとはおっしゃっていません。  

 「でも、表現としては含まれています」  

 (編集部注:何度読み返してみても、Foveonセンサー搭載のLマウントフルサイズミラーレス一眼を開発するとは書かれていないので、画像処理の難しいFoveonセンサーはいずれ放棄するというメッセージと理解したほうがいいのではないだろうか。富士フイルムがX-Trans CMOSセンサーとベイヤーセンサーの併用を始めたのはご存知の通りだ)  

 「ああ、そうか。そうですね。吉岡さんは、ちょっとご招待できてなかったかもしれません。アノー、前日の夜(フォトキナ2018開幕の前日の9月25日夜)に、我々のプレスカンファレンスを開かせて頂いて、立食形式でやらせて頂いたんですけど、そのなかで、もう少し詳しく、山木からのメッセージということで、細かく発表させてもらってます。そのなかで、フルフレームのFoveonセンサーのカメラを2019年中に出す予定ですと、いうふうなことを明言しましたので、これはある意味、世間の皆様へのお約束ということで、我々、やっていきます」

 ★2本立てということはないんですか。Foveon と同時にベイヤーセンサー搭載のLマウントフルサイズミラーレス一眼も開発するということはありませんか。

 「今後の製品なので、どうするかってのは、正直、何とも言えませんけど、少なくともシグマのカメラの特徴というと、やはりFoveonの写りというのが、誰もが思われるところですから、まずはそこをきっちりお出しするというのが必要かなと思っています。将来的にはバリエーションとして、違うアプローチもあっていいのかと思いますけど」

 ★シグマが現在つくっているsd Quattroやsd Quattro Hといったデジタルカメラはフル充電で撮れる枚数があまりにも少ないので、怖くて取材には使えません。Lマウント連合に入ったのを機に、最低400枚くらいは撮れるカメラを作ったほうがいいんじゃないですか。スペック表に撮影枚数を堂々と記載できるようにしたほうがいいんじゃないですか。  

「ある意味、私がシグマに入って、やるべきところっていうのは、そういうところかなと思っています。いままでのFoveonカメラも決して悪いわけではないんですけど、画質はナンバーワンでも、カメラ全体のパフォーマンスとしては最低だと」

   (編集部注:畳家氏は旧旭光学出身だが、サムスンを経て昨年、シグマに入社)

 ★総合点が良くないと。  

 「これはイカンでしょと。やはり、普通の人に普通に使って頂いて、ストレスのないレベルっていうレベルをちゃんと設定して、これはクリアしましょうと。勿論、処理が大変だとか、色んな言い訳は分りますよ。でも、そういう言い訳って、エンジニアの言い訳なので、お客様は関係ないですよね。お客様は触って、使って頂いて、最低限、ストレスのないもの。ナンバーワンのスピードでやれってわけじゃないです。ただ、それをやらないと、やっぱり、商品として成り立ちませんよと。特に、APS-Cなら許せても、フルフレームになると、さらに高いレベルを要求されますので、そこは私もできるかぎり、開発の方を叱咤激励しながら、いま進めています」

 ★Lマウントを採用したフルサイズFoveonセンサー搭載のミラーレス一眼の画素数はどこまで上げられますか。

 「まだ、スペック的なところは済みません、何もお話はできないんですけど、ただ一つだけお話できるとすれば、そんなに画素数は求めていません。それだけはお話できます。それよりは、ちゃんと1画素の情報量をきっちり、さっき言った光を取り込めるフォトの量をきっちり確保して、1画素の情報量というのを大事にしながら、必要充分な画素配置というのを、いま考えていますので、フルフレームになったから、もの凄い高画素でということではない、と思って下さい」

 ★念のための確認ですが、Lマウント連合加盟のライカカメラとパナソニックに対して、シグマはレンズを何種類、何本、供給しろという条件はついていないのですね。         

 「それは本当にありません」

 ★条件を守らないと、どれだけのペナルティ、という決まりもないわけですね。  

 「その辺は日本だけでなく、海外のメディアさんも、凄く気にされていました。ライカパナソニックとシグマって、まったく毛色の違う会社じゃないですか。この、まったく毛色の違う3社が仲良く進むっていうのは、どういうことなんだみたいな、当然、思われるんですけど、でも、我々からすると、逆に本当のコンペティターじゃないんですよね。狙っている価格帯も全然違いますし、例えばパナさんであれば、動画にもっとフォーカスするですとか、商品性もまったく違いますし、ですから仲良くやれてます」  

 ★シグマは3社連合の話が始まるずっと以前からフルサイズのカメラは作りたいと思っていたんですか。

 「そうです。やはり、最終的に商品として、レンズ交換式のカメラとして一つの頂点と言いますかね。やるためにはフルサイズは必要だろうと思っていました。じゃあ、フォーサーズは駄目なのかとか、じゃあAPS-Cで充分じゃないかっていう議論は、当然、よく分っていて、我々もAPS-Cでずっとやってたりもしてましたけど、でも、やっぱりお客様の声としては、最後はフルサイズという声を常に多く頂いていましたので、まずはやらなきゃいけないゴールかと思っています」

 ★元々、パナソニックフォーサーズでなく、ニコンと組んでAPS-Cのカメラを作りたかったという話を聞いたことがありますけど、パナソニックがフルサイズのカメラを作ろうと思い始めたのはいつ頃からだと思いますか。彼らはどう言っていますか。

 「私が聞いているのは、割と同じような時期で、3年くらい前からだと思います。ただ、それ以前にパナソニックさんの内部でどういう話がされていたかというのは、我々には分りません」

 ★きっかけは、ソニーのα7シリーズの評判が良くなってきたからですかね。

 「そこはレベルがどうであれ、間違いないでしょうね」

 ★今回のアライアンスはライカパナソニック、シグマ、3社の連合ですけど、他の組合せになる可能性はなかったんですか。  

 「正直、まったく分らないですね」

 ★シグマの代りにタムロンということはないでしょうけどね。  

 「ライカの社主のカウフマンさんの話としては、シグマがどうっていうことよりも、やはり、日本のレンズメーカーのなかでもオーナー企業に凄い敬意をもって頂いていて、言い方は失礼かも知れませんが、雇われ社長ではなくて、オーナーカンパニーとして、キッチリやっているというところに、カウフマンさんと、うちの山木とお互いにリスペクトする部分があって、割と大きなイベントとかで、ちょっと、そのあとに一緒に食事をしたりというのが過去からあったんですね。そういった関係で、ライカさんとしても一緒にパートナーとして長くやれるってのが、レンズ的にはシグマってのはあったのかなと思いますけど」

 ★今回の3社連合に対する率直な感想は「銅メダルを3枚張り合わせても、金メダルにはならないよ」だったんですが、3社とも金メダルを狙っていらっしゃらないみたいですね。  

 「厳しいご意見ですね。ただ、メダル争いをしようというのとは、ちょっとベクトルが違うところですね。そこは本当にぶれずに我々も表現していますけど、カメラ、レンズを使って頂くお客様のためというのを、我々もパナソニックさんもライカさんも、今回は同じようにメッセージを出させてもらっているんですけど、やはり、もうカメラっていうものは、1億台とか売れてる時代じゃないので、一つのシステムに一つで縛るという考え方って、もう時代遅れじゃないかなと」

 ★そういう意味で、Lマウントをもっとオープンにすべきじゃないですか。例えば、タムロンにしてもシグマにしても、ニコンキヤノンのカメラに装着できるレンズを作っているわけですから、Lマウントアライアンスのメンバーに入らなくても、自由にLマウント用のレンズやカメラを作っていい、ということになりませんか。

 「頑張って、例えばリバースエンジニアリングをしてもらって作るってのは、別にそれを我々が止めることは何もできないんですけど、通信の部分がよく分からないまま作ると、互換性の部分で不具合が出ますとかってなっちゃうと、システム全体の信頼度が落ちてしまうんですね。そこを少し懸念はしています」

 ★ということは、シグマやタムロンが現在作っているキヤノンニコン用のレンズも完璧な互換性は保証されていないということですね。

 「ハイ。我々としては、この時点のカメラまでは充分問題ないんだけど、例えば新商品が出て、新しい機能が入りましたというと、やっぱり我々では対応できない部分があるので、随時、ファームのアップデートをして、ご提供するという形にせざるを得ないんですね」

 ★タムロンはLマウントアライアンスに入っていませんが、Lマウントのレンズを出す可能性はあるわけですね。

 「ないとは言えないですね」

 ★沽券に関わるので、出さないと思いますけどね。  

 「我々が入っちゃっていますからね。そういう意味では、なかなか難しいかもしれませんけど、でも、そういうプライドってのは、もうあまり考えなくていい時代なのかなとも思うんですよね。特に我々も同じ立場ですけど、色んなマウントに対応することで、結果的に我々が頑張って設計した商品を幅広く使ってもらえるってのは、やっぱり良いことなので、あと、我々の場合は人であれば、システムを変えた場合には、マウント交換サービスとかでケアできますけど、というのも、やらせてもらってますので、本当にそうやって、お客様の使い方を考えたときには、プライドがあって、こうだってみたいなところは、もうやる時代じゃないのかなと思いますね」

 ★日本のメーカーだけでなく、中国,韓国のメーカーがLマウントレンズを出してくる可能性もありますね。

 「当然、あると思います。お客さんから見れば、それは選択肢が増える方向なので、非常に良いことかなと思いますね。でも、我々としては先ほども言いましたように、本当に正しく互換性が担保できますかというところは、確かに心配ごとではあるんですけど」

 ★できれば、3社連合の製品を使って欲しいということですね。

 「まずはそうですね、ハイ」

 ★もう一つ、ついでに教えてください。フォトキナ2018で毎日発行されていたフォトキナの情報誌「photokina Daily」(2018年9月27日発行)にLマウントアライアンスに関する山木社長の談話が載っていますが、その談話で「implementationとextensibilityが良くなる」とおっしゃっています。これはどういう意味ですか。  

 「この文面はうちのホームページでも公開しています、日本語で。そちらを見て頂くのが一番間違いがないかと思います」  

 (編集部注:残念ながらホームページに同じ文面は載っていなかった。畳家氏に確認して欲しいというメールを10月1日に送ったが、いまだに返答がない。非常にレスポンスが悪いわけだが、Lマウントアライアンス加盟の3社はいずれも日頃から異常なほど閉鎖的な一面を見せる会社なので、多分、本人たちは自分たちがいかに失礼な会社であるかということを自覚していないのだろう)  

【投稿日(posted date)】2018年10月16日(October 16,2018)  

【投稿者(poster)】エイブイレポート社・avreport's diary・編集長:吉岡伸敏(nobchan@din.or.jp)・副編集長:吉岡眞里子(marico@din.or.jp)/ AV REPORT Co.,Ltd.・avreport's diary・Chief Editor:Nobutoshi Yoshioka(nobchan@din.or.jp)・Assistant Editor-in-Chief:Mariko Yoshioka(marico@din.or.jp)