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avreport’s diary

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    パナソニックLUMIX DC-S1 ( 2420万画素・2019年3月23日発売・29万4999円 )の貸出機が、5月11日、ようやく届きました。このカメラは昨年9月から今年3月までに発売されたフルサイズミラーレス一眼の新製品、6機種のなかで、唯一、解像度チェックができていなかったカメラですが、チェックの結果は残念ながら、期待外れでした。

 先月、4月26日に投稿した当ブログ、avreport’s diaryではパナソニックのS1もきっと、ライカSLを遥かに凌ぐ解像度の高いカメラになっているはずです」と書いたばかりだったので、本当に残念です。

 今回、DC-S1の解像度のレベルをチェックするために、対決機として登場してもらったカメラは下表の10機種ですが、対戦成績は2勝8敗ですから悲惨です。

 対決してもらった10機種の画素数は、2400万画素クラスが5機種、2600万画素クラスが2機種、3000万画素クラスが1機種、4000万画素クラスが2機種ですから、2400万画素クラスで3勝、2600万画素クラスで1勝、計4勝くらいはしないと、ユーザーは納得しないでしょうね。

 因みに、2勝の相手は2420万画素のキヤノンEOS Kiss X10(APS-C 一眼レフ)と、2416万画素のニコンD5600(APS-C 一眼レフ)の2機種です。いずれも、APS-C一眼レフのエントリーモデルですが、実はD5600から勝ち取った1勝は、殆ど優劣差のない、かろうじての1勝なので、実質的には1勝9敗と言ったほうが、いいかもしれません。「勘弁してよ」というユーザーの声が聞こえてきそうですが、LUMIXの担当幹部たちが、こういう苦言を真摯に受け止めてくれるかどうか、かなり心配です。

   LUMIX DC-S1と対決したカメラ

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    今回のテスト撮影に使った解像度チャート

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モンクロ解像度チャート

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カラー解像度チャート

 LUMIX DC-S1の解像度チェックが2勝8敗という結果に終ったのは、とても残念ですが、実はテスト撮影をする前から気になっていたことがあります。

 皆さんのなかにも、LUMIX DC-S1 ( 2420万画素 )と、その兄貴分に当たる同DC-S1R(4730万画素)のボディサイズと重量の数値を見て、「エッ?!」とお思いになった方がいらっしゃるのではないでしょうか。 

 この2つのカメラのボディサイズはまったく同じです。幅148.9×高さ110×奥行96.7mmです。

 因みに、ニコンのフルサイズミラーレスの新製品、Z6とZ7のボデイサイズもまったく同じです。幅134×高さ100.5×奥行67.5mmです。そして、ニコンのZ6とZ7はボディの重量もまったく同じです。両方とも585gです。

 しかし、パナソニックのDC-S1とDC-S1Rはボディーサイズがまったく同じなのに、ボディの重量が違います。DC-S1が899g、DC-S1Rが898gです。エッ? 逆じゃないの、S1が898gで、S1Rが899gじゃないの、と目を疑った方も多いのではないかと思いますが、いずれにしても、わずか1gの違いです。

 なぜ、パナソニックが1gの差に拘ったのか、その理由を私は知りません。この1gの差によって、カメラの性能や使い勝手に大きな違いが生じるのだとしたら、誰もが納得するように、パナソニックはちゃんと説明をするべきだと思います。

 勿論、理屈から考えると、グレードや画素数が大きく異なる2つのカメラのサイズと重量がまったく同じということはあり得ないはずなので、もしかすると、ニコンのスペックには、かなり大胆な誤魔化しがあるのかもしれませが、とにかく質の良いカメラを作れば、小さな失敗はすぐにカバーできるという自信があるのでしょうね。いずれにしても、小さなことは気にしないという社風がしっかり根づいているように思います。

 しかし、パナソニックには、昔から、些細な失敗を恐れるあまり、冒険ができないという、ブレークスルーには無縁の小心さが、これもやはり、しぶとく残っているような気がします。

 言うまでもなく、些細な失敗を恐れて、冒険ができないという社風では天才は生まれないでしょうし、画期的な商品も生まれにくいように思います。

 パナソニック の創業者、松下幸之助氏は晩年になっても、社内の病院のベッドから、しっかり睨みを利かせつつ、毎朝、経営幹部たちの報告を受けていたそうですが、経営幹部たちは「毎朝、腹が痛くなる」と言って、ボヤいていたそうです。その頃からの失敗を恐れる社風がDNAになってしまったのかもしれません。

 パナソニックの商品は昔から大きいのが特徴です。商品のサイズが大きくなるのは、開発メンバー全員の意見を万遍なく、公平に、全て採用してしまうからだと、私は睨んでいます。言うまでもなく、商品が売れなくても、責任の所在をウヤムヤにしてしまうことができるからだと思います。

 つまり、俺についてこいという天才的リーダーが活躍する場面がないということでしょうから、パナソニック が1990年6月に電子式手振補正機能付き小型ビデオカメラ、ブレンビー NV-S1( 750g )を出したときは、奇跡が起きたと思ったくらい驚きました。1年前の1989年6月にソニーが発売して大ヒットした小型ビデオカメラ、パスポートサイズのTR55( 790g )よりも本体重量が軽く、大ヒット商品になったからです。

 しかし、ブレンビーNV-S1の奇跡は、もしかすると、奇跡ではなく、必然だったのかもしれません。なぜなら、パナソニックの経営幹部たちを、毎朝、憂鬱にさせていた創業者の松下幸之助氏が1989年4月27日に94歳でお亡くなりになったからです。そう、ブレンビーNV-S1が発売されたのは、創業者の没後1年余り後のことだったわけですが、ブレンビーの新担当者になった重役さんは「失敗したら、責任は全部俺がとる」と言って、NV-S1の開発者たちを激励したそうです。

 失敗を恐れる会社のなかに、ようやく、失敗を恐れない経営幹部が現れたわけですが、上記の話は又聞きなので、事実とは異なるかもしれません。

 なぜなら、今のパナソニックにも、失敗を恐れないというチャレンジ精神があまり感じられないからですが、それを象徴するのが、パナソニック 、ライカカメラ、シグマ、3社による「Lマウントアライアンス」の結成のように思えてなりません。

 3人の凡才が無い知恵を絞っても、1人の天才に叶わないというケースのほうが多いように思います。また、銅メダルを3枚貼り合わせても、金メダルにはなりません。現に、Lマウントアライアンスに参加した3社からは、まだ、Lマウント採用のカメラが2機種しか発売になっていません。また、その2機種の品質も特に素晴らしいとは言えませんので、Lマウントアライアンスのメンバーが、どの程度の危機感と覚悟と真剣さをもって新しいLマウントカメラの開発に取り組んでいるのか、よく分かりません。メンバーの一人、シグマに至っては休場まで発表してしまいましたから、早くも暗雲が漂ってきたような感じがしませんか。

 しかし、このLマウントアライアンスは失敗に終っても、責任の所在など追求されることはないでしょうね。

                   ★

 以下の解像度チャートの写真の左側は全てDC-S1で、右側が対決機です。画面のピンチアウトで写真を拡大してご覧になって下さい。優劣の差がハッキリと分かります。ただ、カラー解像度チャートのほうは、ピンチアウトで拡大してみても、優劣の差は分かりません。富士フイルムのX-T30以外は、みんな、カラー解像度を上げるのが難しいバイヤー配列のカラーフィルターを採用しているからです。

 例外的にEOS RとEOS RPのカラー解像度はだいぶ良くなりましたが、他社のバイヤー配列カメラは全滅です。ですから、モノクロ解像度対決が2勝8敗だったのに対して、カラー解像度対決は3敗7引き分けで、ただの1勝すらしていません。

 まず、モノクロ解像度対決の写真から紹介します。

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 解像本数はDC-S1が33本、X10が30本で、明らかにDC-S1の勝利。

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 解像本数はDC-S1、D5600ともに30本くらいだが、D5600は偽色が目立つので、DC-S1の辛勝。

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 解像本数はDC-S1が33本、α6400が33本よりもやや多いのでDC-S1の負け。

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 解像本数はDC-S1が33本、ライカSLが33本よりもやや多いのでDC-S1の負け。

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 解像本数はDC-S1が33本、EOS RPが34本なのでDC-S1の負け。

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 解像本数はDC-S1が33本、ニコンZ6が35本なのでDC-S1の完敗。

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 解像本数はDC-S1が33本、X-T30が36本なのでDC-S1の大敗。

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 解像本数はDC-S1が33本、EOS Rが37本なのでDC-S1の大敗。

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 解像本数はDC-S1が33本、DC-S1Rが40本クリアなのでDC-S1の大敗。

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 解像本数はDC-S1が33本、ニコンZ7が40本クリアなのでDC-S1の大敗。

 

 次は番外編として、DC-S1のハイレゾリューションモードをOFFとONに切り替えて比較した写真です。ONの写真は40本をクリアしていますが、三脚が必要です。

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次は、DC-S1とDC-S1R、双方のハイレゾリューションモードをONにして撮った写真を比較したものです。両方とも40本をクリアして綺麗ですが、三脚が必要です。

 

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 続いて、カラー解像度チャートの写真を比較したものです。対決の順番はモノクロ解像度と同じです。

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 DC-S1のカラー解像度はお粗末すぎるので論外。X10はDIGIC8を搭載しているので、もう少し綺麗に写ると思っていたが、チェック模様のノイズが多いので引き分け。 

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 DC-S1のカラー解像度はお粗末すぎるので論外。D5600もX10同様、チェック模様のノイズが多いので引き分け。

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 DC-S1のカラー解像度はお粗末すぎるので論外だが、α6400もDC-S1と殆ど同じ写り方なので引き分け。家電メーカーはどこも例外なく、色に無頓着だが、有名な写真家たちが、その無頓着なメーカーのカメラを平気で使っているのが不思議だ。
 

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 DC-S1のカラー解像度はお粗末すぎるので論外だが、ライカSLも同様にお粗末。SLも家電系メーカー同様、色づくりには無頓着なので引き分け。

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 DC-S1のカラー解像度はお粗末すぎるので論外。EOS RPはストライプが微かだが、出ているので、RPの勝ち。

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 DC-S1のカラー解像度はお粗末すぎるので論外。ニコンZ6は、チェック模様のノイズが多いので引き分け。

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DC-S1のカラー解像度はお粗末すぎるので論外。X-T30は同心円もストライプも比較的よく出ているので、X-T30の完勝。

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 DC-S1のカラー解像度はお粗末すぎるので論外。EOS RはRP同様、ストライプが微かだが、出ているので、RPの勝ち。

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 DC-S1のカラー解像度はお粗末すぎるので論外だが、兄貴分のDC-S1Rも殆ど同じ写り方なので引き分け。

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 DC-S1のカラー解像度はお粗末すぎるので論外。ニコンZ7はZ6同様、チェック模様のノイズが気になるので引き分け。

 次はカラー解像度チェックの番外編。DC-S1のハイレゾリューションモードをOFFにして撮ったものと、ONにして撮ったものの比較です。

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 ハイレゾリューションモードをONにして撮ると、X-T30よりも綺麗に同心円やストライプが写るようになるが、横のストライプのゾーンに派手なノイズが見えるので、改善の要ありだ。 

      DC-S1、DC-S1RそれぞれのハイレゾリューションモードをONにして撮ったものの比較です。

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 DC-S1RのハイレゾリューションモードをONにして撮ったものは、同心円、ストライプともに綺麗に写るが、DC-S1はハイレゾリューションモードで撮ったものには、横のストライプのゾーンに派手なノイズが発生する。絞りをF4から1絞りずつ絞ってF8まで、撮ってみたが、横のストライプにノイズが出なかったのはF4だけだった。

 カラー解像度の高いカメラが欲しかったら、FOVEONセンサー搭載のシグマのLマウントカメラに期待するしかないようだが、何しろ、休場中のメーカーなので、あまり当てにしないしないほうが良さそうだ。


【投稿日(posted date)】2019年5月17日(May 17 ,2019)  

【投稿者(poster)】有限会社エイブイレポート社・avreport's diary・編集長:吉岡伸敏(nobchan@din.or.jp)・副編集長:吉岡眞里子(marico@din.or.jp)/ AV REPORT Co.,Ltd.・avreport's diary・Chief Editor:Nobutoshi Yoshioka・Assistant Editor-in-Chief:Mariko Yoshioka